僕の心を埋めたきみのせい

まだふたりともかわいくんの中に生きていたことが本当にうれしくって、うれしくて、ただただ泣くことしか出来なかった。かわいくんがピアノを弾くってなったとき、わーうれしい、ピアノに添える手がかわいいなあ、ってそれくらいの気持ちで、完全にもう油断してた。そういえばかわいくんとはしもとくんに連弾してもらいたかったんだったなーとか思いながら、アーリーサマーコンの楽しさに油断していた。そんな中かわいくんが弾いたのは、あの英雄が弾いた運命の曲だった。あっという間にあの冬に戻ってしまった。もう初夏だっていうのに。どうしようもなくうれしかった。私たちだけが、私だけがあの冬を胸に抱えて生きているわけじゃなかった。かわいくんの中にもずっといたんだね。忘れないでねって言われているようだった。忘れなくていいんだよって言われてているようだったよ。かわいくん。

もう初夏だっていうのに私がいつまでもあの冬を引きずってユリシーズモーツァルトを想って日々過ごしているのも別におかしいことじゃなかった。だってまだふたりともいるんだから。