サスペンダーと蝶ネクタイ

新宿のありふれた夜。初めて小川じゃない小川を見た。小川はわたしの知っている小川だったけれど、わたしが見たことのない小川ばかりだった。わたしの知らないところの小川だった。一年ぶりにわたしの眼が捉えた小川は、小さな劇場の舞台上で蝶ネクタイを締めてキラキラと輝いていた。

この舞台では小川はギターを持たず、セリフを話し、踊り、ジャニーズじゃないひとたちとおしゃべりをする。小川の声を聞いたのは1年ぶりだったのだけど、相変わらずかわいい声をしていてうれしかった。サスペンダーが異様に似合っていて、きゅっと引っ張りあげられたおしりがやけにまるくてかわいかった。紐で縛られたり、レースで目隠しをされたり、五関くんよろしく持ち上げられたり、きっと小川にとってすべてが、わたしにとってもすべてが初めてのことだった。きっと小川は(亀梨くんぽい…)とでも思ったんじゃないだろうか。ギターの小川優としては今までほとんどの人披露されることのなかった小川のダンス、もっともっと見てみたくて仕方がなかった。小川は踊れるので、本当に心底楽しそうな顔で踊るので、場が増えていくといいんだけどな。小川のゲッダンを生きてるうちに見られるなんて誰も思ってなかっただろ。わたしは思ってなかったよ。
小川もパンフレットで言っていたけれど、役と小川が本当にマッチしているようにわたしも感じた。こんなピッタリハマることもそうそうないよなあ。松本梨香さんという実力者が横にいてくれたのは今後の小川の役者人生…小川がそういう道に進むかは今はよく分からないけど、きっと折にふれて思い出しては心を奮い立たせるような、そんな素晴らしい経験になっているんじゃないかなと思う。私だったら一生の宝物にするよ、なんてったってサトシだよ…。カテコで仲良さそうに話している二人、かわいくってうれしくて、目かっぴらいて見てしまった。

正直別にめちゃくちゃセリフがうまいとか、たくさん出番があるとか、そういうわけでは別になくて、それでも観ているひとの心に何かしら触れるような、そんな存在だったと思う。舞台の小川は。舞台の本筋には直接関係があるわけではないけれど重大な役割であるこの役を、小川がやらせてもらえてわたしはうれしいです。何目線だって話だけどさ。

ギターを持っていないのにイキイキとしてニコニコ舞台に立つ小川は、わたしにとって忘れられない宝物になった。夏、おわり。